天山山脈より      diaries

天山山脈より 1週間いたウルムチから腰を上げ、2日目にサイクリストと会った。 ドイツ人のローランド、ドイツから日本に向けて走っているらしい。 ドイツからここまで何kmか聞いたら、8000kmだという。 「たった8000km」と思ってしまった。 まだ4000kmしか走っていないのに。 しかし、もう全行程の1/3近くも走ってしまったのか。 僕の中では自転車で走る距離の指標がある。 京都−青森、日本海側をまっすぐ駆け上がって1000km。 それを4往復したらヨーロッパか。 早いなぁ。 ローランドは地図もガイドブックも持っていない。 ヨーロッパから日本までの地名を書いたメモだけを見て走っているという。 信じられない。 それでここまで来れたのだから要らないかもしれないけれど、 英語と中国語で表記されている中国の地図をあげた。 ぼくはあと少しで中国を出るので、もうなくても大丈夫。 ただであげると言い張ったけど、それはいけないと言って この先ぼくが訪れるであろう国のお金をくれた。 20年前に初めての海外旅行で日本に来て、そのとき訪れた指宿に行きたいという。 「ヨーロッパに来たら連絡をくれ、そして一緒に走ろう」と言ってくれた。 ぼくにもわかるように、本当にゆっくりと簡単に話してくれたので 彼の言葉はほぼ全部理解できた。 気遣いがうれしい。 その後、平地でもカザクスタンに行けるのに、わざわざて天山山脈へ分け入る。 2日かけて622ｍから3436ｍまで登り、 2340ｍまで高度を下げたあと3410ｍまで。 峠の上のほうは未舗装だった。 きつい傾斜はないけれど平らなところはなく ひたすら上っていくので、かなりしんどかった。 車から「乗っていきな！」と言われたこと4度。 でも「ありがとう、でも自転車で行きたいんだ」 そう断って自力で。 もちろん、そのしんどさに見合った景色を見ることができたので満足。 山を超えると草原が広がっていて、 カザック族が放牧をしている。 そして、彼らのテントには必ず犬がいる。 かなりの確率で鎖なし。 道路近くにテントがあるときは、道を走っているだけなのに 犬が飛び出してくる。 そして、併走しながら吠えまくる。 これが、怖すぎる。 今のところは被害はないが、サイドバッグに噛み付かれたりすることもあるらしい。 気をつけようがないので、噛み付かれないことを祈るのみ。 今は羊に毛を刈る季節のようで、 毛を刈られた羊と、まだ毛のある羊がいる。 突然毛がなくなったので風邪を引いたのか、 くしゃみをしている羊がいた。 いまは中国で最後の町。 数日以内にはカザクスタン入り。 走行距離　4925.14km              中国・伊寧にて     2007/06/18