雨の後      diaries     


       雨の後



3ヶ月ぶりの雨に打たれてたどり着いた、カスピ海南岸の町、ゴルガーン。
雨に濡れて自転車でうろうろしていると、英語で声をかけられた。
「どこ行くんだ?」
宿を探していると言うと、
「よかったら、うちに来な」
言葉に甘えさせてもらうことにして、車の後を追う。
声をかけてくれたのはファルシャードさん、25年物のマツダの軽トラックで荷物を運ぶ仕事をしている。
家に着き、雨で濡れた自転車と装備を家の中に入れてくれた。
体がだるく寒かったので、もしや、と思いながら昼寝をさせてもらった。
夜になって起きたら、やっぱり風邪。
熱を測ってもらうと、38.5℃。
せっかく作ってもらった食事にも、ろくに手をつけられずに、再び寝床へ。
風邪を治すには水をたくさん飲んで寝る、これしかない。

次の日、ようやく起きたのが午後3時。
いつもなら、風邪なんか一日寝たら治るはずなのに、まだまだフラフラする。
「調子はどうだい?」
と聞かれたので、良くない、気分が悪い、と答える。
が、どういうわけか、「ノープロブレム、外に行こう」と言われた。
泊めてもらっているので、風邪とはいえ言うことを聞かないといけないのかな、と仕方なくついて行った。
車であちこち行って、いろいろ説明してくれたが、何も頭に入らない。
ようやく家に帰ったら、20年来の付き合いだという友人が遊びに来ていた。
彼らが帰るまでは起きていないといけないだろう、と、がんばって起きる。
24時、ようやく彼らが帰り、寝床へ。

翌日はずいぶんと体調が良くなり、昼前には起きた。
天気が良かったので洗濯をさせてもらった。
「guestではなくてfriendなんだから、気を使わずに好きにしていいよ」
そう言ってくれた。
その日も家の中でだらだらして過ごし、翌日に出発することを伝える。

翌朝、出発の準備をしていると、
「あなたは5人目の息子なんだから、もっとここに居ていいんだよ」
しかしぼくは次の3月には日本に帰らないといけない。
いつまでもここに居るわけにはいけないので、
ありがとう、でも行かないといけない、そう言い、お礼を言って出発。

完治したかに思われた風邪はまだ治っていなかったようで、
その日はわずか40kmで廃屋の裏にテント設営。
翌朝になっても体調が戻っていなかったので、一日中、テントの中で昼寝したり読書したり。
ちなみにいま読んでいるのは、辻邦生著『回廊にて』。
日本から持ってきてまだ残っている鰹だしで、卵粥を作る。
外食するより、格段に旨い。

風邪をひいた5日目にしてようやく治り、翌日からは元気に走行。


そして今も、ラシュト近郊で、ホセインさんという方の家でお世話になっている。
普段、人に見つからない所でテントで寝ているので、
ここで寝ていい、という許可をもらうだけでもとてもありがたいのに、
室内で寝かせてもらい食事までもらい、本当に感謝の気持ちが絶えない。

イランの人の親切さにはいつも、なぜここまでに、と思わさせられる。
イラン、一番好きな国のひとつだ。






走行距離 11508.80km


             イラン・ラシュトにて     2007/11/20
ファルシャード家
バーザール、ゴルガーン
カスピ海
こいつでパンク10カ所
水タバコ
バーザール、ラシュト
バーザール、ラシュト 結婚式のパーティー 斜面に広がる階段状の村、マースレー ホセインさんレストランで