夜の光      diaries

夜の光 今夜もテントの入り口を開ける。 すると、信じられないくらいの星々が目に飛び込んでくる。 冬の夜は長い。 まだ夕方といっていい時間の6時には灯りを点けないと何もできないくらい暗くなり、 朝は6時半にならないと陽が昇らない。 しかし、だ。 地元の人の家の隣に泊めてもらっている時ならともかく、 そうでないときはテントの中で灯りを使うことはできない。 灯りを点けると、誰かにテントを見つけられるかもしれない。 人に見つかるということは、襲われるかもしれないということ。 だから、ぼくはテントの中で灯りを点けることはできない。 夕日が沈み、橙色だった空が白、黒と変わっていくと、ぼくの一日も終わる。 シュラフにくるまるのが午後7時。 でも、ほとんど毎日、夜中に起きてしまう。 そんなときは、星を眺める。 無数のきらめきが空を埋め尽くし、ときおり、その中に線を引いて星が流れる。 聞こえてくる風の音で、世界の広さを感じる。 星空が途切れるところは、地平線。 たしかに、目の前の空間は無限に広がっている。 これが世界の広さなのだろうか。 この無数のきらめきを、静けさを、空の、世界の広さを、 いつまでも忘れることなく心の中にとどめておきたい。 走行距離　14226.71km              ヨルダン・アンマンにて     2008/02/10