Karakoram Highway
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入試が終わって１週間が経った８月15日。 自転車を積んで関空を飛ぶ。 経由地のバンコクに着き、 「日本語の通じない所に着たんだな」 と思った。 パキスタンの首都・イスラマバードに着き、 「何が起こるかわからないところに着たんだな」 と思った。 イスラマバード空港に着いたのは夜。 なんとかタクシーでホテルまでたどり着き、まず一安心した。 きっとぼったくられたんだろうな、とは思いつつも。 翌朝、ホテルからに出てみる。 「こんな所を、自転車で、走るのか」 恐怖を覚えた。 まるで無秩序なのだ。 鳴り止まないクラクション。 信号無視は当たり前。 中央分離帯のない道路を逆走する車。 そしてマンホールにはフタがない。 しかし、自転車をこぎだすと案外普通に走れるものだ。 交通の外から見ていると無秩序だが、 その中に入ってみるとみんなぼくの存在を認めて、それなりの対応をしてくれる。 参ったのが強烈な日射と熱さ、そして砂ぼこり。 それにも負けず、とりあえず市内をウロウロしてみる。 銀行では職員が 「パキスタンで困ったことがあったら、いつでも力になってやる」 と言ってくれた。 警官に道を聞いたら、地元の人に道を聞いてくれた。 そして、そこまで歩いて連れて行ってくれた。 なんていい人ばかりなんだ。 着いてまだ24時間も経っていないが、この国が好きになった。 昼に宿に帰ると、日本人に会った。 「ここからフンザに行きたいんだけど、 土砂崩れで１週間もバスが止まっていて足止め食らってるんだ」 は？？？ フンザっていうのは、ぼくが行きたい所。 そこを通って、中国へ抜けるのが今回のルートなのだ。 バス乗り場へ行ってみる。 「スカルドゥ行きのバスはある？」 と聞くが、やはりないという。 うーむ。 ここからスカルドゥ（Skardu）までの間には盗賊が出没する地域があるので、 バスで抜けたいのだ。 とりあえず、待つしかないようだ。 夕方の街をうろつく。 この街では誰がそんなに買うんだというぐらいのたくさんのサングラスを売り歩く人が何人もいる。 その一人に声を掛けられた。 「いらない、いらない」 と言うが、いっこうに引き下がらない。 「Hey, my friend」 を繰り返す。 あまりにしつこいので、 「おれは眼鏡かけてる。わかるだろ？だからサングラスはいらないんだ」 と言うが、それでもぼくのことをmy friendと言って売ろうとする。 もう面倒くさくなったので無視して早歩きで立ち去った。 「my friend」 なんて嫌な言葉だ。 そういえば、この街でホームレスの姿を見ていない。 この街にホームレスはいないのかと思っていたが、そんなわけはない。 歩いていたら、猿を連れた裸足の女の人がやってきた。 猿をぼくに見せたいようだ。 なんかイヤだなと思いながらも猿に好きなようにさせていると、ちょっと引っかかれた。 血もにじまないくらいの傷だが。 いいかげんに立ち去ろうとすると、女の人が掌をぼくに差し出してきた。 ああ、そういうことか。 「ダメだ、お金はあげないよ」 とジェスチャーする。 しかしぼくの周りに人が集まっていて何もあげずには済まされそうになかったので お金を少しあげた。 もっとと言われたが、無視して宿に帰る。 そしてすぐさまひっかかれた所を消毒した。 街中で動物を連れているのは物乞いだ、と勉強になった。 翌日。 朝起きて、自転車でバスターミナルへ向かう。 順応するのは早いもので、もう砂ぼこりもクラクションも気にならない。 諦め半分で受付でバスがあるか聞いてみる。 すると。 「今日はある」 やった。 ぼくと自転車の分のチケットを買う。 そして宿へ戻って、オーナーにお別れを言う。 メル・ギブソンそっくりのオーナーはいい人だ。 荷造りし、バス乗り場へ。 荷物満載の自転車をこぐとわくわくする。 バスの屋根の上は荷台になっていて、そこに自転車を積んでもらう。 席に着き、窓を開けようとする。 が、ほこりが詰まっていてむちゃくちゃかたい。 なんとか開けた。 バスの車窓から見る街は喧騒そのもの。 ぼくの横には少年が座った。 バスは昼の12時くらいに出発した。 横の少年は英語を話さない。 なにやらウルドゥー語で独り言を繰り返す。 そしてたまにぼくに聞く。 「チャイニーズ？」 ぼくは「違う、ジャパニーズだ」と言う。 そしてまた独り言。 その独り言のなかで何回も「チャイニーズ」と言っているのがよくわかる。 何回も、何回も、何回も。 そしてまたぼくに「チャイニーズ？」と聞く。 このガキ、馬鹿にしていやがる。 チャイニーズを馬鹿にするのはどうでもいい。 ぼくをチャイニーズだと思うのも構わない。 しかしぼくをチャイニーズと決めつけて、ぼくを馬鹿にするのはむかつく。 本当にイライラするガキだ。 「チャイニーズ？」 ４、５回目に聞かれたとき、 グッと睨んで、何も答えなかった。 そうしたらガキはほかの席へ逃げて行った。 |
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